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くろいのうとの断片のうと

「くろいのうとと白紙の少女」、くろいのうとの断片 描いたり書いたりする日々

あおい鎮守府へようこそ

大規模作戦の主力作戦にて、四つの海域を攻略した鎮守府。
幾度も出撃してようやく英霊を呪縛から解放することに成功。
そんな鎮守府も今日は新入りの歓迎ムードと攻略部隊の労いムードに満ちていた。

本部から海域奥部の分析結果等の書類が送られてきていたが資源も少ない現時点では攻略を見送る次第となった。
それも相まって今や飲めや歌えに大忙しだ。


着任直後いずれの戦力になると早速演習に駆り出された新入りの二人も少しずつ空気に馴染みつつあった。
「葛城さんにリットリオさん、どうですかうちの鎮守府は?」
二人の新入りに近づいて来たのは艦隊のエース、赤城だ。
「ごめんなさいね、あの時は録に挨拶できなくて。」
あの時とは着任直後のこと。
葛城が着任すれば赤城はすぐさま入渠し、Littorioが着任すればLittorioが演習に駆り出された。
そしてその時とは随分雰囲気が違うことに二人は不思議に感じていた。
「あの、お顔につけていたものは?」
疑問を投げかけたのはLittorioだった。
「あれですか? あれはより遠くを見るための兵装です。 古鷹さんたちの目とは違うものですよ。」
この鎮守府の赤城は戦闘時には特殊なスコープをつけていた。
より射程を伸ばすことで高火力を敵艦より早く撃ち出すことができる。
特殊な視界になるがそこは一航戦、斉射必中であった。
「葛城さんではまた扱いが変わるでしょうね」
名を呼ばれた葛城は感動を覚えていた。
この人は自分の名を正しく呼んでくれたのだ!くの字も出なかった!
「葛城さん?」
「はい!葛城です!宜しくお願いします!」
「……? ええ、よろしく。」

この葛城、着任の瞬間に「くーちゃん」と提督が渾名した為主力艦の多くがくーちゃんと呼んでいた。
元を言うなら、提督は着任以前から「くずしろ」と呼んでいたため鎮守府の者の多くが「くずしろ」の認識だったのだ。
そんなもので初対面から「かつらぎ」と呼んだ赤城に懐いたのは至極当然なことと言える。

「あ、あの、お話もっと聞かせてもらっても!?」
「ふふ、いいですよ。あっちで空母のみんなが話しているのでそこに行きましょう?   リットリオさんは、ふふ、お迎えが来たみたいですよ?」
「え?」
「Littorioさん、これからよろしくね!」
ぶつかる勢いでLittorioに話しかけたのはPrinz Eugen。
「あ、演習でいっしょだった…」
「そう!私はPrinz Eugen!まだHöheが低いからキョー艦じゃなくて修行で一緒だったの!」
「あなたはドイツの人ですよね?どうですか日本は?」
「日本?そうだねー」
「あなたも戦艦なの!?」
突然会話に割って入ったのは清霜。
彼女もまた今回の攻略作戦にて新しく着任した艦娘。ちょうどここにいた戦艦に文字通りぶつかって行きここでLittorioの番になったのだ。
「え、あの……」
「そうだ!Littorioもキヨシモも金剛山(こんごうざん)のところに行こう!日本のことも戦艦のことも教えてくれるから!」
行こう行こうとPrinz Eugenと清霜に手を引かれ、Littorioも金剛たちのグループへと入っていく。

「ずいぶん大きくなったものね」
壁にもたれて独りごちたのはこの鎮守府の提督、あおいであった。
会場となった元会議室もいまや艦娘達にあふれ、静かなところを探す方が難しい。
ようやく見つけたここもすぐに騒がしくなるだろうことを隣に気配を感じて思う。
「大きくなるなら電たちも大きくなりたかったのです。」
そこにいたのは子供の見た目らしくオレンジジュース入りのコップを持った電だった。
「電ちゃんも立派なレディになりたいの?」
「レディになれなくても、こういう時に司令官さんの頭を撫でられる背は欲しかったのです。」
「上官の頭を撫でるだなんて、随分なことを言うのね。」
「司令官さんも電には頭が上がらないと思うのです。」
さっきまで空を撫ぜていた電が叩くように言い放った。
「本当に随分なことを言う。」
「しれーかん、何してるのさー!」
「お呼びなのです。」
敷波たちがこっちを見て手を振っている。
「感傷にも浸っていられないか。」
「浸るなら勝利の余韻に浸るのです。」
こくりと電はオレンジジュースを飲む。
「それもそうか…  ついこの前まで大規模作戦はまともに攻略できなかったのにね。  今回は敵さんも本気じゃなかったかな?」
「みんなが頑張ったのです。」
「そうね…」
また会場を何を見るともなく眺める。
今までは考えることもなかった改二の姿になった艦娘たちがちらほらと見えた。
「司令官!ほら、何やってるんですか!」
改二になった吹雪に手を引かれ、活気の中に戻る。

いつか見ると誓った光景の中にいる。
今日はそんな感傷に浸る前にこの子たちをめいいっぱい褒めてやらなければ。頭わしわしのぐちゃぐちゃになるまで。そんなことをあおいは思ったのだった。

その後の鎮守府には笑い声や、新たなスキンシップに対する羽黒や名取の悲鳴、そして不知火のボディブロウの音が響いた。

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